「お元気ですか?」と書きかけて、手が止まる。 差し出す先の、あなたの顔を思い浮かべ、 どんな暮らしをしているの? 笑顔を向ける相手はいるの? と、文字より心で語りかける。 「あれからね」と書きかけて、また手が止まる。 私はね、随分と泣いたし、 人の優しさを受け入れられなかったし、 なかなか笑顔になれなかったよ、と呟いた。 呟いて、 それでも時間が流れれば その分楽になっていったのよ、と力を抜いて微笑んだ。 あなたへ送るハズの手紙は、結局描き進められずに 屑箱へと消える。 「お元気、ですか?」
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