肌寒い朝 目覚めと共に あなたはいないと思い知らされる 物音ひとつしない部屋 背筋を伸ばし カーテンを開け 朝の光を招き入れる 自然と目線は椅子に向く 座る主が居ない 位置が変わることのない椅子 一人分のコーヒーをドリップ トースターに入れる食パンは一枚 片目の目玉焼き 大して見もしないのに テレビの電源をオン 物足りない空間 私の香水だけが漂う部屋 「行ってきます」も 「行ってらっしゃい」もない玄関 そして扉を閉じ 鍵を掛ける あなたのいない朝を こうして繰り返している
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