ホームに立ち、電車を待つキミの横顔が忘れられない。
板張りの床、軋む学習机、キミの斜め後ろの座席ボクは、いつだって振り向く姿を見逃すまいと、よそ見をせずに前ばかりを見ていた。
友達がキミに話しかけ、それに答えるキミの声を聞き逃すまいと、必死に耳を澄ましていたよ。
あの頃のボクは、見ているだけだった。何もせずにただ見ているだけだった。
どんどん季節が移り行き、同じ門をくぐることもなくなり、キミの姿はボクの前から消えた。
今はあの教室から遠く離れた空の下にいるボクは、甘く酸っぱい青春の欠片としてキミを思い出す。
何も出来なかったことを悔やみはしない。けれど時折開くアルバムの、集合写真を見てキミに話しかける。
「ボクはキミが好きでした」
その言葉の後、こう続ける。
「ボクはキミが好きです、と伝えたかった」
そしてアルバムを閉じる。
慌ただしい日々の、リアルな色の現在に戻る。
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