アンスリウム

「アンスリウム」
そう言えたらいいのに。
「その花は、アンスリウムよ」
そう彼に言えたらいいのに……。

「何てったっけ? ハートみたいな形の、花なのに作り物みたいなやつ」

彼が友人に話しかけているのが聞こえてきた。

「ん? 何だっけな。ノドまで出かかってるって感じ。思い出せないのって気持ちワリーな」

あの子がそう答えてるのが、なんだか嬉しい。言いたいな、私が。
「アンスリウム」
ただその名前を告げられたら、彼とお話しできるかもしれないのに。
内気な自分を心で責める。たった一言だよ?何で言えないの?

「なぁ」

へ?

「なぁ、ハートみたいな形の、花なのに作り物みたいなやつ、なんて名前か知ってる?」

わ、わっ、私? し、知ってるよ!

「ア、アンスリウム。アンスリウムよ!」

「さすが女の子だな。ありがと」

ありがと、だって。私に「ありがと」だって!

「よーよー、おまえあいつと話したかっただけだろ? 正直に言ーえーよ!」

……えっ!?

「うっ、うるせー! おまえ、余計なこと言うな!」

顔を赤らめる彼に、期待しちゃったりする。

創作部屋〜アンスリウム〜2004.3.4

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